2016年 2月 の投稿一覧

「企業・組織内でなぜ対話/ダイアローグが  必要なのか?」~ 後編 ~

前回の記事(2月18日発行)の最後に触れた、対話を生み出す秘訣とは何でしょうか?

ここで言う秘訣は、いくつかの要素が相乗的に作用し合って生まれます。
それは、対話を生み出す土壌になっているメンバー同士の関係性、メンバーがどんなモード(あり方)でいるのか、そして、メンバーの聴き方のコツ(技術)、です。

まずは、見えやすくわかりやすい聴き方のコツから紹介します。

前回少し紹介したように、対話の状態では自分の意見を守ったり、押し通したりすることはほとんどありません。
なぜなら、そこにいるメンバーの聴き方に大きく影響を受けているからです。

では、その聴き方とは何か。

それは、相手が話していることを評価/判断をはさまずに、ただそのままに受け取るように聴くことです。

議論や普段の会話では、相手が話しているそばから、その話が面白い、つまらない、合っている、間違っている、わかりにくい、などと常に頭の中で評価/判断を走らせながら聞いています。

対話では頭の中で評価の声をちょっと脇において、なるべく評価の色をつけずに相手の話をそのままそこに置いておく感じです。

そうすると、意見を述べる方は自由にのびのびと話ができます。
思いついたアイデアを、すぐにまとまっていない考えも思い切ってその場に出すことができるのです。

次に、対話の場にいるメンバーのモード(あり方)です。

議論の場では、自分の意見を守ったり、押し通したりするために、相手より優位に立つ必要がありますから、その状態はいわゆる戦闘モードになります。
つまり、相手の粗を探し隙あらば攻め込む、またはボロを出さないように理論武装して、言い間違いのないように脇を固めているような状態です。

対話では、心がオープンで開かれています。
そこに出てくる様々な考えや意見に対して、好奇心旺盛で尊重し合うようなムードがあります。

最後に、メンバー同士の関係性を見てみましょう。

対話では、お互いへの信頼があります。
どんな考えも尊重され、大事に扱ってもらえるという安心感がそこにはあります。
そして、お互いに協力して新たなアイデアを見つけ出そう、という協力する気持ちもあります。
議論では、相手を仮想敵とみなしているかもしれません。

このメンバーのモード(あり方)とメンバーの関係性を土壌で喩えると、議論は固く乾いた土、対話は湿ったふかふかの土といえます。
どちらの芽が吹きやすいかは言わずもがなだと思います。

以上のように、

・評価/判断をしない聴き方
・オープンマインド、好奇心
・信頼と安心感

が存在する時、対話の場から豊かなアイデアや発想が生まれやすくなります。

以上のような秘訣を参考にしていただいて、対話している人と人の間に生まれる智慧が引き出され、企業・組織の現場で活用されることを願ってやみません。

 

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「企業・組織内でなぜ対話/ダイアローグが  必要なのか?」  ~ 前編 ~

最近になって、組織運営において「対話/ダイアローグ」が重要な要素であることが、ますます認識されつつあると感じます。
私自身もコーチとして、マネジメントの立場として、対話の機会に事欠きません。

そこで、あらためてここで『対話』と『議論』の違い、対話のコツについて考えてみたいと思います。

「ダイアローグ」の語源はギリシャ語の“dialogos”で、
“daia(間で)+legein(話)+os”、つまりは、

「人と人との間にある話」

と言われています。
この“間にある”というところが、対話の性質をうまく表していると思います。

例えば、「この新規事業をどうすべきか?」というテーマで会議をする場面を想像してみましょう。

まずは誰かが口火を切って、推進することに賛成の考えを述べたとします。
そこから先が議論になるのか対話になるのか、分かれていくところです。

議論の場合は、意見を述べる人の中には明確な方向性があって、その方向性に持っていきたいという意図があります。
なので、前に発言した人の考えが自分の方向に合っていればその意見を利用するでしょうし、反対の方向であれば、その意見を覆すための材料を盛り込むでしょう。

つまり、議論をするという時、最初から行き先ありきの場合が多いのです。
そうなると、行き先の違うものの間には必然的に対立構造が生まれ、なんとか相手の意見を覆そうと頑張ることになります。

結果として、どうにかなんらかの結論を出すことはできたとしても、その結論を想定していなかったメンバーにとっては違和感や不全感を残すこともあり得ます。

では、対話ではどうでしょうか。

私の経験では、対話の場にいる時の大きな特徴は、まずメンバーが自分の意見や立場を守ろうとしていないというところにあります。
それゆえに、オープンマインドで、他の人の意見や考えも「なるほど」と受け止めやすくなります。
それぞれが、相手が出している考えをオープンに受け止め合っていると、次第にその対話は、次の段階に入っていきます。

自分が発言していることの中に、最初から用意していたものばかりではなく、その場で思いついた、あるいはどこからか湧いてきたような考えが混じっていくのです。
そのような質の発言が誰かから始まると、それをきっかにして、他の人も同じような種類の、つまりその場で生まれ出たような考えを述べ始めるのです。

このあたりが、その人たちの間にあるものとでもいえる性質ではないかと思います
個人的には“間にある”、というより、“間に生まれたもの”、という言い方のほうがしっくりくる感じです。
そこにいるメンバーがオープンマインドで自分の考えを述べ、相手の考えも受け止めていった先に生まれる“今ここにある智慧”といってもいいと思います。

先行きが不透明な経営環境の中では、もはや最初から想定できる答えに頼っているわけにはいかなくなっていることからも、対話で生まれるような“今ここにある智慧”を活かしていくことがますます必要とされているように思います。

面白いところは、同じメンバーでも議論になる時もあれば、対話に進展していくこともあることで、そこには対話を生み出す秘訣とでもいえるものがあると思います。

次回はその秘訣について紹介していきたいと思います。

 

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職場の人間関係を壊す4つの行動とは?

「あなたは職場の人間関係で悩んでいませんか?」

「はい」と答えた方、悩んでいるのはあなただけではありません。
「いいえ」と答えた方、あなたは運がいい、もしくはそこには働きやすい環境や雰囲気を作ってくれているリーダーやメンバー(達)の存在があることでしょう。

「職場はいいけど、家庭がねえ」と答えた方、今回お伝えすることは職場だけでなく身近な人間関係でも役に立ちますので、是非最後まで読んでいただけたら幸いです。

さて、一体どれくらいの人が職場の人間関係について悩みを感じているのでしょうか?

厚生労働省が、平成 24 年に全国13,332の事業所と17,500人の労働者を対象に行った「労働安全衛生特別調査」によると、「仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレス 」を感じていると答えた労働者の割合は、 全体の60.9%にのぼりました。

その理由の内訳をみると、「職場の人間関係の問題」(41.3%)が最も多く、次いで「仕事の質の問題」(33.1%)、「仕事の量の問題」(30.3%) となっています。

寝ている時間を外したら、私たち社会人が1日の半分以上の時間を過ごすのが職場です。
誰もが安心して気持ち良く仕事をしたいと思っているはずなのに、一体どうしてこうなってしまうのでしょうか?

夫婦・カップルの関係性、コミュニケーションについて40年以上にわたる科学的研究で世界的有名なジョン・ゴットマン博士によると、関係性に決定的にダメージを与える行動として、次の4つを挙げています。

———————
1.批判/非難
2.防御
3.侮辱
4.無視・逃避
———————

これはカップルの研究をベースにしたものですが、組織行動の研究においても、同様に職場、組織の関係性にも適応できると考えられており、「コミュニケーションの4毒素」と呼ばれています。

では、1つずつ見ていきましょう。

1.批判/非難:
仕事においては、厳しいフィードバックや耳痛い真実を伝える必要がある場面はあります。
けれど、相手の性格、人格、能力を傷つけるような言葉は攻撃と受け取られ、関係性を壊します。

例: 「よかれと思って情報提供したのに、何も改善されていません。結局あなたにはやる気がないんですね」

2.防御:
相手から攻められたら、自分を守りたくなるのは人間の性です。
ただ、弁解や言い訳はむしろ火に油を注ぎます。

例:「他のプロジェクトだって忙しいんだ。この仕事だけをやっているわけじゃないのに、なんでわかってくれないんだ!」

3.侮辱:
皮肉たっぷりな物言いや嫌味、冷笑などは、相手だけでなく、職場の空気を凍らせるのに十分です。
侮辱的な言葉は相手に嫌悪感を抱かせ、やる気を削ぎ、人間関係には猛毒として作用します。

例:「で、君、会社に何しに来てるの?」「あー、あの給料ドロボーね。」

4.無視・逃避:
前述の3つの毒素によって職場にマイナス感情が蔓延してくると、次にやってくるのは無視・逃避で、職場は徐々に殺伐としてきます。

例:「おはようございます。。。。(シーン)」「皆さん、いかがですか?。。。(質問者には目を合わせず黙って下を向く)(一部でクスクス笑い)」

さて、このメルマガをお読みの皆さんのチーム、職場ではこれらの「4毒素」はどのくらいありますか?
もしくは、自分がついやってしまっていると思う「毒素」はありましたか?

こう訊かれるとちょっとドキッとされるかもしれませんが、どうぞご心配なく。
これらの行動が0%というチームや組織はまずありません。

一方、こうした否定的なコミュニケーションが肯定的な関わりを大きく上回る場合、職場のメンタルヘルスや離職率などの問題が起きてくると研究では示唆されています。

毒のある行動は多くの場合、無自覚に行われています。
いわば本人のコミュニケーションスタイルの癖であったり、チーム、組織の文化として「伝統的に」引き継がれているものだったりすることが大半です。
ここでのポイントはそこに自覚があるかどうかなのです。

では、これらの4毒素についてどのように対処していったらいいのでしょう。

ここではシンプルに、3つをお勧めしたいと思います。

===========
1) 「4毒素」についての教育啓蒙をチームで行い、
共通言語とする

2) ゴットマン博士の提唱する「解毒剤」を行う
3) リーダーのあり方として「毒素」の奥にある願いを
聞き取ろうとする

===========

1) 「4毒素」についての教育啓蒙をチームで行い、共通言語とする

4毒素がチームの生産性やモチベーションにどれだけ影響を与えているか、ということをリーダーが教育し、チームの中で共通言語にしてしまうことです。
「ゴメン。今、俺防御しちゃったね」などと笑って軽く話せるところまでいけば、大分定着してきた証拠です。

2) ゴットマン博士の提唱する「解毒剤」を行う

「解毒剤」ですが、例えば、相手の人格を非難するのではなく、行動を客観的にフィードバックし、将来への期待を伝える、などがあります。

3) リーダーのあり方として「毒素」の奥にある願いを聞き取ろうとする

「毒素」をどのように捉えて関わるか、というリーダーのあり方も大きく影響を与えます。
ゴットマン博士は「不満の背後には夢がある」という表現をされていますが、毒素の奥にはその人なりの「思いや願い」があるものです。

「あいつはああいうヤツなんだ」という決めつけを一旦脇に置いて、その人の奥にどんな思いがあるのかを聴けたなら、よりよい職場を作る上で大事な情報となる可能性は高いと言えます

さて、ここまでお読み頂いて、皆様はどのような感想をお持ちでしょうか。

「それは確かに理想的かもしれないけど、そんなことやってる余裕も時間もないんだよ」

と言った声もありそうですね。
組織「風土」とはよく言ったもので「関係性創り」は「土壌」改良のようなものです。
目に見えにくい職場の「関係性」も、腰を据えて取り組めば必ず変化が起こります。

まずは目の前の職場の人間関係から、まさに今日のあなたの行動から変化を起こしてみませんか?

参考:ゴットマン・インスティテュート(英語) https://www.gottman.com/

 

 

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「生きている会議の創り方、進め方」  第3号 ~ 全員が発言する ~

今日は立春。
節が明けて、シャンと背筋を伸ばした笑顔が似合う年が巡ってきました。
この1年も、ウエイクアップ・リーダーズ・マガジンをよろしくお願い致します。
今回は、生きている会議シリーズの第3号をお届けします。

つい先日、ある企業様の定例会議をオブザーブさせていただきました。
この会議は、事業展開の中で重要な位置づけを持って年に2回開催される定例の社内会議で、参加人数は90名前後、半日間に渡って催される真剣勝負の場です。

この生きている会議シリーズの第1号、第2号でお伝えした通り、まず、会議の目的を明確にして、全員に共有します。
その上で、この会議をどんな雰囲気にしたいかについて、全員が自らの言葉にして発言する、というセットアップで会議はスタートしました。

そして、経営トップの強いコミットメント、企画メンバーの情熱、会議の進行役を担った方々の手腕、そして参加された方々の真摯な姿勢、これらのエネルギーが相まって、全員が主体性を持って参加できる、まさに生きている会議が展開されました。
このすばらしい成果とチャレンジに、心からの敬意を感じています。

今回はこの有難い体験も踏まえ、「全員が発言する」ということについて触れていきます。
会議が生きているか死んでいるか、ということは、参加する人達の主体性をどう喚起できるかにかかっています。
その主体性の喚起のために、可能な限り、参加者1人1人が発言する機会を設けることが重要になってきます

これは単純な話なのですが、その会議の時間中、どれくらい自分が発言できたかによって、自分がその会議に主体的に参加できているかどうかの実感が左右されることは、皆さまもご自身の経験から容易に想像していただけると思います。

とはいえ、限られた時間の中で、全員に全体の場に対する発言の機会を設けることは現実的ではありません。

そこで活用するのは、2人一組で話す時間帯を会議の進行の中に盛り込んでおくことです
その議題について感じていること、自分の意見、疑問点、どのようなことでもいいので、参加者全員が口を開いて、自分の言葉で発言する機会を設けるのです。

その際に、ちょっとしたコツがあります。

2人一組で話す時間は、双方向の対話ではありません。
時間を区切り、話し手になった人は黙り込むことなく、とにかく話し続けます。
自分の考えがまとまっていない場合でも、まとまっていないまま、とにかく話し続けます。
聴き手になった人は、相手が話すことに対して意見することなく、ただ聴くことに徹する、という一方通行の時間にします。
そして、時間がきたら、お互いの役割を交代するイメージです。

仮に片道90秒と設定すれば、90秒×2回=3分で、全員が自分の意見を口にする機会を持つことができます。
その3分が終わったところで、参加者の中から何人かの声を全体で共有する時間を持てば、‘システムの声’が会議の場全体に聴き届けられる、という次の展開が可能になります。

そのことついては、次号でお伝えしますね。

今回も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。

 

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